認知症の母と、夫の会話

 

夫は、私の母の部屋の前を通る度、一応母に声を掛け

る。どんな答えが返ってきてもいい。相手は重度の認

知症。正しい答えが返ってくるなんて期待してない。

ただ、その短い時間だけでも話しかけてあげたら義母

への刺激になるかな?・・くらいに(気楽に)考えて

いる。

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(1)

「お義母さん、秋のおいしい果物はなんですか?

り、り、りから始まる果物がありますが、り、り、

なんでしょう?」

「り・・・り・・・」・・・(母)

「これです。り、りん」・・・(夫)

「り・・・りん・・・りんご」・・・(母)

 

「はいリンゴですね。では他に秋の果物、何がある

でしょう。な、な、なから始まる果物は? な、な

・・・な・・・」

「な、な、なし」・・・(母)

「はい、梨がありますね。では、み、み、み から

始まる果物は?」

 ・・・ミカンを見せる

「みかん」

 

「はい、では、か、か、かから始まる果物は?」

「かき。まあ そんなとこですかね」・・・(母)

「ヒヘェー、お義母さん、そういうことば、まだ

知っていたんですか!」

 

重度の認知症の母、

こんなふうに自分から発するってことが滅多にない

から、夫はびっくりして私の所に報告しにきた。

あはは、もうそれ以上考えたくなくて、打ち止めに

したかったんだね。

 

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(2)

●スズランとは・・・今、これを書いている私のこと、

つまり母にとっては「娘」のこと。

●リボン・・・私たちの孫のこと=母にとっては「ひ孫」

 

「お義母さん、僕とスズラン、どっちが好きですか?」

「両方」

「僕と、スズランと、リボンチャン、だれが好きですか?」

「みんな」

「僕と、スズランと、リボンチャンと、お義母さんの旦那

さんの〇さん、だれが一番好きですか?」

「みんな」

「4人のうち、一番歳をとっているのは誰ですか?」

「〇さん」

「おーすごーい! では一番若いのは誰ですか?」

「リボンチャン」

「ひぇー! お義母さん、今日は頭すごく冴えてますね!」