小澤竹俊さん発 穏やかな最期を迎えるために

小澤竹俊さんの著書

『死を前にした人に あなたは何ができますか?』

そのまま引用します。一部を載せようと思ったのですが、端折ると伝わらなくなりそうで・・・81~82頁までほとんど、そのまま引用します。

(この本を図書館で借りるなり、購入するなりして81~82頁をご覧くださいと書いてもよいのですが・・・そうもいきませんので、そのまま引用します)

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人生の最終段階に共通する自然経過

人は赤ん坊に戻っていく

人は亡くなるまでにどのような経過をたどるのでしょうか。わかりやすい ”たとえ”を紹介します。

赤ん坊の食事は、成長とともにミルクから離乳食、そして普通の食事に変わっていきます。眠る時間は徐々に減り、起きている時間が増えていきます。そして、寝返りすらできなかった赤ん坊が、やがて首が据(す)わり、寝返りができるようになり、ついには歩きだします。

人が最期を迎えるということは、この逆をたどります。つまり、徐々に赤ん坊に戻っていきます。老衰や認知症、循環器・呼吸器疾患、悪性腫瘍では、進行の仕方やスピードが異なりますが、徐々に眠くなる時間が増え、食事量が少なくなり、歩くことができる距離が短くなるという点は同じです。

穏やかな最期を迎えるために

この身体の変化を自然なことととらえれば、関わり方も見えてきます。お迎えの近い人は、食事量が少なくなります。これは自然なことです。一部の認知症の方を除いて、一般的にお迎えが近くなると、おなかがすかなくなります。その人が食べることのできるちょうどよい食事量が身体に合った量であると考えると、家族も介護スタッフも、経口摂取を無理強いせずに支援できるでしょう。

しかし、少しでも長く元気でいてほしいと願う家族や援助者にとって、食事は生きていくための援助としてあきらめたくないものです。この思いを認めながら、過剰な栄養や水分は、痰がらみや腹水、胸水、浮腫の原因となることを一緒に考えることができるとよいですね。

その上で経管栄養の量や口からの摂取について最善の方法を選ぶことが、人生の最終段階を迎えた人とその家族の支援に欠かせません。

同様に、徐々に眠くなる時間が増えていくことや、歩くことができる距離が短くなることも、穏やかに最期を迎える準備として自然なことです。お迎えが近い時には、無理に起こさず、やや暗めの部屋で静かに眠ることができる環境を整えることは、穏やかに最期を迎える配慮の1つとして大切にしていきたいと思います。