上田 諭著『不幸な認知症・幸せな認知症』

 

とても分かりやすい本があります。

認知症の人と家族の会・埼玉県支部から借りて

いる『不幸な認知症、幸せな認知症』という本

です。(上田諭 うえださとし著・・・新聞記者をやめて

北海道大学医学部に入り直し、医者になった人です)

 

この本の目次がおもしろいです。

あとでそのまま書いてみます。

(各長いタイトルのあとに、ページ数が書いてあるのです。

珍しいでしょ? ページ数はここでは書きませんが、下記

のようなそれぞれ長いタイトルの中で、ご興味がありまし

たら、図書館で借りてご覧になってはいかがでしょう。

すごく読みやすい本です。

ただし、盲目的に内容に賛成や拍手を送っているわけでは

なく、私にとっては一部に自分の思いとは違うな・・・と

いう場面もありますが、お医者さんなのに上から目線では

ないし、患者や家族とずいぶんお話ししているんだな・・・

ということがわかります)

 

長いタイトルをそのまま書きますね! どうぞ!!

 

≪認知症になったらどうしようと不安に思っているあなたへ≫

●認知症は治らない脳の病気です。

だからといって、無暗に恐れることはありません。

まずはどんな病気なのか、きちんと知ることから始めませんか。

たとえば、「高齢者が長期入院すると認知症になる」というの

は正しくありません。

遺伝的な要因があるかどうかも、まだわかっていません。

 

●認知症の約7割はアルツハイマー病です。

脳が変質してしまう病気ですが、原因は今のところ不明。

残念ながら防ぎようがなく、

対策を立てるのも難しく、いつ、誰がなってもおかしく

ありません。

だからこそ、受け入れる気持ちを持つほうがいいのです。

 

●家族の顔を見てもわからない。どこにいるのかわからない。

徘徊をする、というのは認知症でも重度の人の症状です。

最初の兆候から周囲の人がおかしいなと感じるまでが半年

から1年くらい。

そこから重度になるまでには、10年から15年かかります。

とてもゆっくり進行するのです。すぐに何もわからなくな

る、なんてありません。

 

●認知症を診断するツールのひとつである

改訂長谷川式簡易知能評価スケールは、

年齢や簡単な計算、野菜の名前などを尋ねるとても簡単な

テストです。

私は基本的に30点満点で27点未満だと認知症の可能性を

疑います。

 

●認知症初期の軽度から中等度、重度へ、どのように症状が

変わっていくのか、知っておきましょう。

病気について多くの知識を得ることは、無用な不安感や恐怖

心を少なくするのに役立ちます。

 

●ボケたら困る、ボケないようにしよう、と思っていますか?

ボケたっていいではないですか。

認知症は早期発見で治る病気でもなく、予防もできません。

90歳になれば6割は認知症です。だったら病気を恐れず、

それまで楽しく暮らす方がいいのではないでしょうか。

 

●認知症は病気なのか、自然な老化現象なのか?

私はどちらの視点も必要と考えています。

医学研究の場では克服すべき病気と考えても、

診療やケアの現場では認知症患者を「困った人」にせず、

受け入れ、助けていくことが大事なのです。

 

●食べものやアロマセラピー、運動などで認知症を予防

しようというテレビ番組や雑誌の特集を見かけます。

脳を健康にしようという試みは悪くありませんが、

残念ながら、認知症の予防になる保証はありません。

 

●認知症かもしれないと自分で疑いを抱いたら、

まずは認知症を診てくれる病院を探してください。

どの医師に診てもらうか、そのん選択権はあなたに

あります。

納得がいかなければ病院を変えてもいいのです。

 

●一人暮らしだから認知症になっても誰にも気づいて

もらえないと不安に思う人もいるでしょう。でも大丈

夫。周囲が何かおかしいと感じるはずです。その助言

に耳を傾けてください。

もし認知症と診断されたら介護保険の手続きをしてく

ださい。地域にサポートしてくれる人を作るのです。

≪認知症と診断されたあなたへ≫

 

●認知症軽度と診断されたあなたの脳は95%正常です。

感情面もその場の理解力も問題はありません。

人ときちんと話すこともできますね。

そんなあなたに無理解な人がいたら怒りたくなるでしょう。

その気持ちは十分にわかります。

 

●いつも心の中では家族にたくさん感謝しているのに

素直にそう言えないのは、ご家族の対応も関係しますよね。

もっと尊敬の念をもってくれたら、やさしく接してくれた

ら、「ありがとう、いつも世話になっているね」とあなた

は言いたいのではないでしょうか。

 

●打ち込める趣味や楽しみ、ときめく気持ちに

なるような人がいたら、ずっと手放さずにいてください。

これからのあなたの人生を豊かにし、

あなたを輝かせる大切なこと、大切な人だからです。

 

●デイサービスにいきなさいと言われていやだなー

と思ったことがありますか?

家族に追い出されるように感じたからでしょうか?

一度だけでもいいので行ってみてください。

あなたが来ると喜ぶ人がきっといます。

 

●若年性アルツハイマー病の方が

これからのことについて書いたものがあります。

そのなかで認知症の高齢者の方におすすめできるものを

見つけました。できる範囲で試してみるのもいいかもし

れません。

 

≪認知症のご家族、友人、知人、介護職のあなたへ≫

●「あなたは認知症です」と高齢者にアルツハイマー病

の告知をすることに意味はないと考えています。

だから私は本人に告知をしません。

これからの生活を楽しくすることのほうが大事なのです。

 

●家族や友人が認知症と診断されたとき、対応の鉄則が

3つあります。

「指摘しない、議論しない、怒らない」

あなたの生活をこれまでと少し変える気持ちでご本人を

見守ってあげてほしいのです。

軽度から中等度が続く10年をどう生きるか、真剣に考え

て行動する認知症患者もいます。

そんな理性的な行動を邪魔するのが、周囲の関わり方

です。軽度なのに重度のような症状が出てしまうのは、

実は本人の病気のせいではないのです。

 

●アルツハイマー病に発生しやすい典型的な妄想があり

ます。それが「もの盗られ妄想」と、「嫉妬妄想」です。

多くの医師たちは薬で解決しようとしますが、そこには

本人の孤立感や不安感が隠されています。

張り合いのある生活を送ってもらうことで、そんな妄想

が生じなくなるケースが実は多いのです。

 

●やさしく声をかけたり、そっとからだに触れる。

それだけで認知症の症状はやわらぎます。

もし、認知症がきっかけで寝室を分けたりしたのなら

昔に戻すことをおすすめします。

心理的、物理的に距離が離れないことが必要なのです。

 

●認知症ケアの指針となっている「キットウッドの公式」と

フランスの介護の手法である「ユマニチュード」。

メディアで取り上げられることが多くなった注目すべき

ケアをご紹介します。

 

●ご家族のご苦労やつらいお気持ちはよく理解している

つもりです。

でも、少しだけ考え方を変えてみてください。

そうすればあなたもご本人も

ずっと幸せな気持ちで暮らせるはずです。

 

●かつでの介護は密着タイプと放置タイプでした。

今はその中庸、公的な介護サービスを活用し、

自分自身の時間を持ちながら介護するのがベストです。

利用者を受け入れる側はぜひともデイサービスの多様化を。

ケアマネージャーさんの確かな目がとても大事です。

 

●親や配偶者が認知症と診断されたら、

少しだけご自分の生活を変えてください。

その方との最後の時間を幸せに過ごせた、と思えるのが

目標です。

そのために必要なのは、「ラクな」介護生活なのです。

 

●認知症初期の方には書くことをすすめています。

ノートにその日のあったことを書き、

後日、読んで生活に役立ててもらう。

それができるほどの認知機能を維持するには、

人と関わり、人に認められることがもっとも大事です。

 

●「脳トレ」が認知症に効くらしいですね、と患者さんの

ご家族に効かれたことがあります。たしかにそうかもしれ

ません。

ただし、トレーニングそのものではなく、一緒にいる誰か

にほめられることが効果的なのです。

 

●久しぶりに会った友人の様子がおかしい、そんなときは

問い詰めたり、指摘したりせず、あいまいにしておきまし

ょう。

もし、認知症と診断されたとしても、

その方と友だち付き合いを続けられれば最高です。

 

●認知症を診る医師の多くは薬で症状を抑えようとします。

まったく無駄なことだとはいいませんが、

それ以上に認知症の人の心の葛藤や、すぐに怒ってしまう

のはなぜかなど、症状の背景にあるものにこそ、目を向け

るべきです。

 

●認知症に処方される薬について知っておきましょう。

抗認知症薬は何種類かありますが、

どれも進行を一時的にくい止めるもので、

ある期間が過ぎると効果がなくなり元に戻ります。

私自身は薬だけに頼る診療は不適切だと思っています。

 

●薬の副作用についてもう少しお話しします。

抗精神病薬は、過鎮静や静座不能症といった副作用が

あり、イライラや、暴言、暴力を増長することがあり

ます。

安易に薬で解決しようという姿勢、介護がラクになる

からという理由で処方するのは反対です。

 

●認知症は薬を出せばほかにすることがない。

医者がそう考えるのにはそれなりの理由があります。

ご本人の話を聞く精神療法では一銭にもならないのです。

せめて薬を出して処方箋料を報酬にするぐらいしか

収入面では手立てがない。これでいいわけがありません。

 

●昔の話を思い出してもらう回想療法では、普段は胸に

しまっている本音を維持しようとするリハビリテーション

療法でも笑顔が増えるケースがあります。

 

●精神科医はオーガニック派とメンタル派に分けられます。

オーガニック派は「脳」を診るのが得意で、メンタル派は

「心」を診るのが得意です。認知症は脳の病気であり、心

の問題でもある。そのはざまにある病気なのです。

 

●精神療法の第一歩は患者さんご本人に注目し、ある程度の

時間、きちんと話に耳を傾けること。

どんな専門をもっている医師でもできることです。

介護の現場で働く人たちもまた、本人の視点に立ったより

良いケアを模索しています。

 

●うつ病と認知症は高齢期の二大疾患ですが、うつ病は治り、

認知症は治ることがありません。

周囲が治そうとすればするほど、本人の負担は増えていく。

今のままで構わない、治らなくていいと思うことで心が穏や

かになるのだと、あるとき気づいたのです。

 

 

以上、上が目次にあたる部分に書いてあり、このあとに頁数が

書いてあります。(笑)

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で、今、私が読み始めている本は

磯田道史著 『日本史の内幕』(戦国女性の素顔から

幕末・近代の謎まで)

 

磯田さんの本って、『天災から日本史を読みなおす』

『無私の日本人』など読みましたが、歴史がおもしろ

いです。

 

母がショートステイに行っているのに、

最初の日は午後8時半、

「そろそろおむつを替えなくちゃ」と思い、

「あ、そうだ、今日は母、いないんだ、ああ、なんかすごく

しあわせー!」と思う。

たまにはこういう日があってもいいなー!と心底ホッとする。