自分が元気でないと介護できない

 

2年前の秋、介護者である私の心臓が音(ね)をあげた。

 

「介護なんかしている場合ではない!自分の方が先

に死んでしまうよ!」と医師に言われ、その日の夜、

ダメもとで、知人がやってるホームホスピスきりん

の家に母を預かってもらえないか打診した。

 

うちの母は寝たきりの介護度5のおばあさんだ。

普通のショートステイだとたぶん寝かされっぱなしに

される人だろう。寝たきりなのに、寝かされっぱなし

されると、あっというまに衰えて死んでいくだろう。

 

認知症だけど薬は1つも飲んでないし、静かだし文句

を言わない(あまり言えない)。

自分の歯が30本あるのでご飯を食べさせる時や、排泄

介助を全部する時はスタッフも大変だけど、それ以外

は(悪く言えば)ほったらかしにできるし、文句言わ

ない、最高に楽なお客さんだ。

 

でも、介護者の私としてはそうはいかない。

そのままほったらかしにされたら、体の衰え一直線で

ある。ダメ元でホームホスピスに連絡した。

そこでは(たとえ寝たきりの母でも)食べる時に必ず

ベッドから車いすに移乗してくれる。1日3食+おや

つの時間、つまり1日4回は車いすに移乗してくれる。

足は必ず地面につかせてくれる。利用者は多くても3

人だけだから、ヘルパーさんの目が届く。(ま、本人

が部屋に入って来ないで!と、スタッフの入室を拒否

する人でなければ・・・スタッフの目が届くはず)

 

そういうところでないと、私も安心して手術を受けた

り、入院したりできないし、私が退院してもすぐに母

に家に戻られても困る・・・。(自分の体が第一なので

退院後、たとえ親だろうが人の介護なんかやってられ

ない・・・)

 

母を数か月預かってくれることになった。感謝。

これで親のことを考えずに、自分の病気に向き合える。

母は母で、家にいるより優しく声を掛けられ、丁寧な

介護してもらったことだろう。(家だと私に叱られる

ことが多いからね)スタッフにちやほやされて、たく

さん話しかけてもらったことだろう。

 

手術、入院、退院後も母のことを思い出さなくて良か

ったのは、やっぱり預け先に信頼のおける人がいたか

らだろう。感謝。

 

介護者だって、介護より自分の体の方が大事だよ~。

介護者が元気でないと、介護なんかできないよ~。

 

降参、お手上げ、助けて、だれか助けて~!と声を

上げてよかった。

 

あれから2年。

毎年1回だけ検査と診察を受けに赤十字病院に行っ

ている。普段は近所のかかりつけ医に2か月に1度

行くことになっている。