良心に従って

 

(1)母と私の会話

母・・・あのー、ここは何か食べさせてくれる所ですか?

私・・・あはは、なーにその言い方。お腹空いたのね。

母・・・お腹は空いてないんだけど、何かおいてあるの

かと思って。

私・・・だから、お腹が空いたって言えばいいのよ。

母・・・お腹は空いてないんだけど・・・

私・・・お腹がすいた。何か下さいって言えばいいのよ。

母・・・お腹は空いてないんだけど・・・

私・・・あ、そう。お腹は空いてないのね。じゃあ何も

食べたくないのね。

母・・・いやあ、なんか、向こうにあるかと思って・・・。

私・・・おなか空いてるんじゃん。空いてるって素直に

言えばいいのに。じゃあ、私のあとについて同じことを

言ってみて。お腹がすいたので 何か ください」

母・・・「ください」

私・・・「最初からそう言えばいいのよ」

 

母を車イスに乗せ、洗面所で手を洗ってやって、食事の

時間にした。母はもりもり食べた。

 

夫から、「1回分の食事量が多いよ。寝たきりのばあさ

んだよ。それじゃあ一日ニ食にしても、三食分と同じ量

じゃないか」

「うん、そうかもなぁ。よく食べるからなぁ~」

「与えすぎだよ。なんか丸くなってきた。腹の方なんか

君より太いよ」

「そうかぁ。じゃあ気をつけます。与えすぎないように

・・・太らせると介護が大変だからね」

 

 

(2)夫と母の会話

母は介護度5。 寝たきりで認知症がかなり進んで

いる。直前(数秒前)のこともすぐ忘れる。

普段は、オウム返しはすることもあるけど、会話に

はほとんどならない。こちらからの一方通行が多い。

 

とある日、私が帰宅したら夫が「久しぶりにお義母

さんと会話したよー」と報告してくれた。

「へー どんな会話したの?」

 

「僕がお義母さんの部屋の前を通ったら、お義母さ

ん、僕を呼び止めて、あのー、ここは初めての所で

よく分からないんですが、もうすぐ6時になるので

食事は出るんでしょうか?と聞いたんだ。こんな長

い会話ができたの初めてじゃないか?」

 

「お義母さん、ここを施設と思ってるのかな??

だから、僕は、お義母さんよく時計が読めましたね。

おなかが空いたんですかと聞いた。そしたら、いえ、

おなかは空いてないんですけど、6時だから食事の時

間かなと思ったもんで。起きて向こうへ行かなきゃ

いけないかな?と思ったんです・・・のような内容を

しゃべったんだよ。びっくりした。あんな長い会話が

できたの、初めてじゃないか?」

 

「へー 珍しいね。あはは、よっぽどお腹が空いてた

んだね。お腹が空いてるほうが頭が冴えるんだろうか」

 

あとで、わたくし、母の部屋へ行ってみた。

「お母さん、お腹すいた?」

「いや、すいてないよ」

「あ、そう、さっき〇さんに6時だから食事の時間で

すか?って聞いたんだって?」

「言わないよ」

「あ、そう。でも、お腹が空いたんだね」

「すいてないよ」

「正直にすいたって言えばいいのよ」

「すいてないよ」

「あ、そう。素直におなか空いたって言えば可愛いの

に。今7時だけど、夕食の時間か朝食の時間か分かっ

てるの」

「???」

「夕食の時間だよ。お腹空いてるでしょ?」

「すいてないよ」

「うそばっかり」

 

母は、もりもり食べた。

たぶん、歩かれる元気なおばあちゃんが食べる量

より少し多いかな、しっかり食べた。

 

(3)よその人の思い出

 

◆若いころ、姑にさんざんいじめられました。

うらみ、つらみは山ほどあります。これを話せば本

ができます。

でも、姑は、寝たきりになった時、まだ頭が確かな時

に言っておくわと、私に、ありがとう。世話になりま

した・・・って言ってくれた。

それを別の場面でも言ってくれて・・・100いくつで亡

くなるまでに、全部で3回、私にありがとう・・・って

言ってくれた。

それを励みに介護ができた。

 

 

◆介護歴15年の介護者からのアドバイス

あなたの介護している人は、ありがとうって言わな

い人かもしれない。

でも、人として、ちゃんと介護しなさい。

見てあげなさい。

自分の良心に照らして、自分ができる範囲でいいから

介護(=ケア)してあげなさい。

 

つきっきりで介護しなくていい。

別に在宅でなくてもいい。

施設に預けててもいい。

だけど、できるかぎり施設に行って、話し相手をしたり、

手を握ってあげたり、小さいことでいいからお世話して

あげなさい。

それが自分のための介護です。

そういうあなたを子どもは見てます。

孫も見てます。

おてんとう様も・・・。

 

※ ↑ それを聞いて・・・

うーん、と考えさせられた私デス。