2022年2月9日(水) 朝日新聞朝刊 「声」
「どう思いますか 緊張の訪問介護」
の中で、「認知症の人と家族の会」代表理事の鈴木森夫さんの
文章をそのまま載せます。
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「家族支える制度作り急務」
「家族の会」の調査でも、介護家族が感じるつらさの一つが、ケア
を担当する専門職との関係に起因するという結果が出ています。投稿
に登場する「赤の他人」「緊張する」という言葉が象徴的でした。
確かに「相性」はあります。でも、そんな言葉で問題を矮小化(わ
いしょうか)してはいけない。利用者や家族の立場を尊重しつつ利害
を調整するのはケアマネージャーの役割なので、遠慮は禁物。ただ、
伝え方や伝える内容に悩むかもしれませんね。「家族の会」では当事
者が体験をもとに支え合う「ピアサポート」の場を設けています。
認知症に限らず、まずは介護経験者とのつながり、相談するのも手か
と思います。
身内だけで介護を担(にな)う時代は終わりました。専門職は人生
終盤の良き伴奏者。「他人に迷惑をかけてはいけない」といった発想
は捨てて、「支えられ上手」「頼り上手」になるのも、長い介護生活
をうまく乗り切るコツです。
ケアマネとして働いてきた私は、専門職の中でヘルパーからの報告
を最も頼りにしてきました。肝心要(かんじんかなめ)の存在であり
ながら報酬は極めて低く、新型コロナの検査もワクチンも後回し。優
(すぐ)れた人材が次々と離職し、在宅介護は破綻(はたん)寸前で
す。国には一日も早い改善をお願いしたい。
他方、介護保険制度はこれまで、家族支援にはあまり光を当ててき
ませんでした。同居家族がいると、受けられるサービスに制限がかか
るのはこのためです。しかし、介護家族の幸せなしに介護を受ける本
人の幸せはありえない。家族が介護による不利益を被(こうむ)るこ
となく安心して働き、余暇を楽しみ、人生を謳歌(おうか)できる社
会にしなければなりません。そのためにも、「介護者支援法」の制定
など、介護家族を物心ともに支える仕組み作りが急務だと思います。
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